更年期にLDLコレステロールが上がる理由|大豆イソフラボンと水溶性食物繊維でできる対策
食事も運動も前と変えていないのに、健康診断でLDLコレステロールだけが上がっていた——。戸田公園の女性専門パーソナルジムHealthyでは、40代後半から50代のお客様からこのご相談をよくいただきます。
これは食生活が乱れたせいではなく、更年期にともなうホルモンの変化が関係している可能性があります。今回は、なぜこの時期にLDLが上がるのかという仕組みと、食事でできる対策をお伝えします。
先に結論をお伝えすると、鍵になるのは大豆イソフラボンと水溶性食物繊維の2つです。
なぜ更年期にLDLコレステロールが上がるのか
血液中のLDLは、肝臓にある「LDL受容体」という取り込み口から回収されていきます。この受容体をどれだけ作るかに関わっているのが、女性ホルモンのエストロゲンです。
動物実験では、エストロゲンを投与すると肝臓のLDL受容体が数倍に増え、逆に抗エストロゲン薬を使うとその働きが打ち消されることが報告されています。つまりエストロゲンは、LDLの回収口を増やす方向に働いているということです。
閉経を挟んでエストロゲンが減ると、この回収口が十分に作られなくなります。すると血液中に残るLDLが増え、食事を変えていなくても数値だけが上がって見える、という状態が起こり得ます。実際、閉経後には総コレステロールとLDLコレステロールが上昇することが繰り返し報告されています。
数値が上がった原因が「自分の不摂生」ではなく体の仕組みの側にある、という点は、まず知っておいていただきたいところです。
対策① 大豆イソフラボンでエストロゲンの働きを補う
大豆に含まれるイソフラボン——ゲニステインやダイゼイン、そしてダイゼインから腸内細菌が作るエクオール——は、エストロゲンと分子の構造がよく似ています。そのため体内でエストロゲン受容体に結合し、エストロゲンに似た働きをすることが知られています。
先ほどの話につなげると、イソフラボンにもLDL受容体の発現を後押しする方向の作用が期待できる、ということになります。
実際に、11件のランダム化比較試験をまとめた解析では、大豆イソフラボンの摂取によって総コレステロールが約3.9mg/dL、LDLコレステロールが約5.0mg/dL(3.58%)低下したと報告されています。劇的とまでは言えませんが、食品から得られる変化としては意味のある数字です。
「大豆の摂りすぎでホルモンが乱れる」は心配しなくていい
ここは私自身、考えを改めた部分です。
これまで私は、大豆イソフラボンを積極的に摂るとエストロゲン過剰になり、女性器系の疾患の要因になるのではないかと考えていました。ですが調べ直してみると、その心配はしなくてよさそうです。
理由は2つあります。ひとつは、イソフラボンが持つエストロゲン様の作用が、エストロゲン本体のおよそ1000分の1程度と非常に弱いこと。もうひとつは、イソフラボンが受容体に対して一方的に作用するのではなく、体内のエストロゲンが十分にある状況ではむしろ結合を妨げる側に回る性質を持つことです。足りないときは補い、多いときは抑える方向に働く、という理解が現在は一般的です。
ただし、エストロゲンが過剰になること自体は体にとって望ましくありません。イソフラボンを気にするより、肥満・慢性炎症・肝機能の低下といった、ホルモンバランスを崩す土台のほうを整えるべきだと考えています。
1日の目安は50〜70mg
イソフラボンの摂取目安は1日あたり50〜70mg程度です。これは、
- 納豆1パック
- 豆腐半丁
- 豆乳100ml
このいずれかで届く量です。特別に頑張って大豆製品を食べ続ける必要はありません。
むしろ、ここも指導を見直そうと思っている点です。この量で足りるのであれば、大豆製品を摂りすぎている方には減らす提案をすることも、これからは選択肢に入れていきます。「体にいいから多いほどいい」ではない、ということです。
対策② 水溶性食物繊維でコレステロールを外に出す
体内のコレステロールが増える経路は、大きく3つあります。
- 胆汁酸からの再吸収
- 肝臓での体内合成
- 食事から摂るコレステロール
意外に思われるかもしれませんが、量として大きいのは1番目です。
コレステロールは肝臓で胆汁酸の材料として使われ、食事のたびに小腸へ分泌されて脂肪の消化吸収を助けます。そして役目を終えた胆汁酸は、その約95%が小腸の終わり(回腸)で再び吸収され、肝臓へ戻っていきます。これを腸肝循環と呼び、1日に4〜12回ほど繰り返されています。
ここが対策のポイントになります。胆汁酸の再吸収を減らせれば、肝臓は失った分を補うために、体内のコレステロールを新たな胆汁酸づくりに回すことになります。結果として、血液中のコレステロールが使われていくと考えられます。
その役割を担うのが水溶性食物繊維です。水溶性食物繊維は腸の中で胆汁酸を吸着し、再吸収させずに便として体の外へ運び出します。67件の試験をまとめた解析では、水溶性食物繊維を1日2〜10g摂ることで総コレステロールとLDLコレステロールが有意に低下したと報告されています。ただし同じ論文は、現実的な摂取量の範囲では効果は小さいとも述べています。過度な期待はせず、続けることが前提の対策と考えてください。
海藻、こんにゃく、大麦、オクラや山芋などのネバネバした食材、果物に多く含まれます。
コレステロールは悪者ではない
数値ばかりが注目されますが、コレステロールは体に必要な材料です。
- 脂肪の吸収に使う胆汁酸の材料
- 女性ホルモンを含むステロイドホルモンの原料
- ビタミンDの材料
減らせば減らすほど良いというものではありません。特に更年期の女性にとっては、ホルモンの材料でもあるという点は覚えておいていただきたいところです。
胆汁酸をうまく作れない場合
体質的に胆汁の分泌が弱い方もいます。その場合、ウルソデオキシコール酸を含む整腸薬に頼るという選択肢もあります。ウルソデオキシコール酸には胆汁の流れを促す働きがあり、肝臓のLDL受容体への取り込みを高める可能性が動物実験で示されています。酪酸菌を配合した製品であれば、腸内環境の面でも期待できます。
ただし注意点があります。ウルソデオキシコール酸でコレステロールが下がったという報告は、もともと胆汁の流れに問題がある患者さんを対象にしたものが中心です。健康な成人を対象にした試験では変化が見られなかったという報告もあり、誰にでも同じように効くとは言えません。医薬品ですので、使用の前に薬剤師や医師にご相談ください。
エクオールを作れているか調べてみる
イソフラボンの効果を語るうえで欠かせないのがエクオールです。これはダイゼインから腸内細菌が作り出す物質で、イソフラボンの中でも特にエストロゲンに近い働きをします。
そして重要なのは、これを作れる人と作れない人がいるということです。報告によって幅がありますが、日本人ではおよそ4〜5割、欧米では2〜3割程度とされています。作れるかどうかは腸内細菌次第で、腸内細菌の多様性が保たれている人ほどエクオールを作る能力が安定しているという報告もあります。
エクオール検査で調べられますので、結果は次のように受け止めてみてください。
作れていない場合 — イソフラボンの恩恵を受けにくい状態です。大豆製品と水溶性食物繊維をより意識して摂り、あわせて腸内環境を整えることが対策になります。
作れている場合 — 女性特有の不調や生理不順が比較的少ない傾向があると言われています。今の食事と腸内環境を維持していきましょう。
いずれの場合も、土台になるのは腸内細菌の多様性です。大豆製品を食べ続けることでエクオールを作る菌が増えるという報告もあり、水溶性食物繊維はその菌たちのエサにもなります。2つの対策は、別々ではなくつながっています。
まとめ
更年期にLDLコレステロールが上がるのは、エストロゲンの減少によって肝臓のLDL受容体が減り、血液中のLDLが回収されにくくなることが一因と考えられます。
対策は2つです。
- 大豆イソフラボンを1日50〜70mg(納豆1パック程度)。エストロゲンの働きを穏やかに補います
- 水溶性食物繊維で胆汁酸を排出し、体内のコレステロールを消費に回します
どちらも、特別な食品を買い足す必要はありません。納豆と海藻を食卓に戻すところから始められます。
数値が気になっている方は、まずご自身の食事の中に大豆製品と水溶性食物繊維がどれくらい入っているかを見てみてください。Healthyでは血液検査の結果をもとにした食事指導も行っていますので、判断に迷う場合はご相談ください。
参考文献
- Parini P, et al. Importance of estrogen receptors in hepatic LDL receptor regulation. Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology. 1997.
- Taku K, et al. Soy isoflavones lower serum total and LDL cholesterol in humans: a meta-analysis of 11 randomized controlled trials. The American Journal of Clinical Nutrition. 2007.
- Brown L, et al. Cholesterol-lowering effects of dietary fiber: a meta-analysis. The American Journal of Clinical Nutrition. 1999.
- Iino C, et al. Daidzein Intake Is Associated with Equol Producing Status through an Increase in the Intestinal Bacteria Responsible for Equol Production. Nutrients. 2019.
- Iino K, et al. Stability of equol production capability is associated with the diversity of the gut microbiota of the host: a prospective cohort study. BMC Microbiology. 2026.
- Ahuja V, et al. Significant inverse association of equol-producer status with coronary artery calcification but not dietary isoflavones in healthy Japanese men. The British Journal of Nutrition. 2017.
- Poupon RE, et al. Cholesterol-lowering effect of ursodeoxycholic acid in patients with primary biliary cirrhosis. Hepatology. 1993.
- Ceryak S, et al. Effect of ursodeoxycholic acid on hepatic LDL binding and uptake in dietary hypercholesterolemic hamsters. Atherosclerosis. 2000.
- Woollett LA, et al. Effect of ursodeoxycholic acid on cholesterol absorption and metabolism in humans. Journal of Lipid Research. 2003.
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